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【別居前にやるべきこと】

【別居前にやるべきこと】

Q. 別居前にやるべきこと、注意するべきことはありますか?

A. 別居は夫婦関係において重大な決断であり、特にその後に離婚や財産分与、親権問題が発生する可能性がある場合には、事前にしっかりと準備しておくことが重要です。ここでは、別居を考えている方が別居前にやるべきこと、そして注意すべきポイントについて解説します。


1 生活費や婚姻費用の確認

別居すると、配偶者と別々に生活費を負担することになります。特に、別居後も夫婦が法律上婚姻関係にある場合は、収入の多い方が婚姻費用として生活費の一部を負担する義務があります。婚姻費用は、裁判所が提供する「婚姻費用算定表」に基づき、夫婦の収入や子の年齢などによって金額が決まります。 そのため、別居前に配偶者の収入を把握しておく方がよいでしょう。具体的には、前年度の源泉徴収などの収入資料を取得することが考えられます。


2 財産の把握

別居前には、夫婦が所有する財産の状況を把握しておくことが望ましいです。別居後には、相手方配偶者名義の財産を調べることが困難となりますので、別居前に夫婦が所有する財産状況を把握しておくことが望ましいです。具体的には以下のような情報を確認しておきましょう。

• 夫婦名義の不動産や自動車

• 銀行口座(銀行名、支店名、口座番号など)や証券口座

• 保険や年金の情報

• 負債(住宅ローンや借金)の状況

後々の財産分与をスムーズに進めるためにも、通帳などの写真やコピーを手元に確保しておくことが考えられます。


3 別居後の住居の確保

別居を決断した場合、まずは新しい住居を確保する必要があります。住居費用や引っ越しにかかる費用も考慮し、生活をスムーズに移行できるよう準備しておきましょう。特に子どもがいる場合は、学校や保育園などの環境も重要です。


まとめ

別居を相手方配偶者に伝えるかどうかも悩ましい問題です。相手方配偶者による暴力やモラハラがある場合などには、事前に伝えることなく別居を開始することも考えられます。別居や離婚についてお悩みの方は、シャローム綜合法律事務所にご相談ください。

 

(弁護士 山本祥大)

【婚姻費用、養育費で私立学校の費用や塾代は請求できるのか】

【婚姻費用、養育費で私立学校の費用や塾代は請求できるのか】

 婚姻費用や養育費で私立学校の費用や塾代など、通常の教育費以外の特別な教育費用を請求できるのでしょうか?

1 算定方式による教育費用の額

婚姻費用・養育費の金額は、実務上「改定標準算定方式・算定表(令和元年版)」(算定方式と言います。)により算出されています。婚姻費用・養育費の内訳として「教育費」が含まれているのですが、算定方式では、公立中学校・公立高校に関する学校教育費を前提に算出しています。そのため、私立学校の費用や塾代などは考慮されていません。

2 私立学校の費用

婚姻中から私立学校に進学していた場合、義務者(支払う側)が私立学校の進学を承諾している場合には、私立学校の費用も請求することができるとされています。義務者の承諾がない場合でも、夫婦の学歴、職業、資産、収入、子の学習意欲や能力から私立学校での就学が不合理でない場合、私立学校の費用を請求できる可能性があります。

原則として、義務者の承諾が必要とされているのは、公立学校でも十分な教育体制が整っているため、公立学校の費用を超える負担は義務ではないと考えられているからです。

3 塾(習い事)の費用

婚姻中から塾に通っていた場合や、義務者(支払う側)が承諾していた場合には、塾の費用も請求できる可能性があります。承諾がない場合でも、子の発達障害などにより塾や習い事に通う必要がある場合には、その費用の請求が認められる可能性もあります。

4 まとめ

私立学校や塾の費用を請求したい場合、されている場合には、協議や調停が難航する可能性もあります。婚姻費用・養育費でお悩みの方は、シャローム綜合法律事務所にご相談ください。

 

(弁護士 山本祥大)

【労働審判とは】

【労働審判とは】

1 労働審判とは

労働審判は、労働者と事業主(会社)の間で生じる民事に関する紛争を、原則3回の期日で、事件の審理(事実関係についてそれぞれが主張)、調停(話し合いによる解決)、労働審判(話し合いで解決できない場合に、労働審判委員会が判断するもの)を行う手続きこのことをいいます。具体的には、解雇、未払い賃金など、労働関係のトラブルが対象となります。

労働審判は、裁判官と労働者側・使用者側から選任される労働審判員2名の合計3名によって構成されます。

2 労働審判のメリット

⑴ 迅速な解決

労働審判の最大のメリットは、その迅速さです。通常の裁判が数か月から数年かかるのに対し、労働審判は通常3回以内の審理(3カ月程度)で終結します。これにより、紛争が長引くことによる負担を軽減することができます。

⑵ 第1回の労働審判期日では、しっかり議論する

第1回目の労働審判期日では、労働者と会社の担当者・取締役などが出席し、裁判官・労働審判委員が事実関係の確認をします。会社側の違法性が認められるような事案では、裁判官から会社の担当者に対して厳しい質問や指摘がされることもあります。

⑶  柔軟な解決が可能

労働審判では、単に法的な結論を出すだけでなく、当事者の意向を踏まえた柔軟な解決ができる可能性があります。審判員が仲介に入り、和解による解決を促すため、双方が納得のいく形で問題を解決できる可能性が高まります。

3 労働審判のデメリット

⑴ 訴訟移行のリスク

労働審判の結果に不服がある場合、審判が出てから2週間以内に当事者の一方から異議が出されると、審判の効力は失効し、通常訴訟に移行します。そのため、最終的に解決に至るまでの期間が長引くことがあります。

⑵ 複雑な事案には不向き

労働審判は、迅速かつ簡便な手続きを目的としているため、複雑な事案や証拠が多岐にわたるケースには不向きです。こうした場合、十分な審理が行われない可能性があり、最適な解決が得られないことがあります。

4 おわりに

労働問題の解決方法は、交渉・労働審判・訴訟など複数の手段があります。

労働問題でお困りの方は、シャローム綜合法律事務所にご相談ください。

(弁護士 山本祥大)

【整理解雇・リストラの有効性】

【整理解雇・リストラの有効性】

1 はじめに

経済状況の悪化などの理由で、企業が従業員を解雇するケースが増えています。このような解雇は、一般に「リストラ」「整理解雇」と呼ばれています。しかし、整理解雇は、労働者に責任のない企業側の事情によって解雇されるというものであり、労働者を保護する必要性が高いため、判例により一定の要件が定められています。

2  整理解雇4要件とは

整理解雇の有効性については、以下の「整理解雇4要件」に基づいて判断されます。

⑴ 人員削減の必要性

整理解雇を行うには、まず「人員削減の必要性」があることを要します。そのため、企業の経営状況が問題となります。

⑵  解雇回避努力義務

次に、「解雇回避努力義務」が求められます。これは、解雇を避けるために企業が可能な限りの努力をしたかどうかを確認するものです。例えば、希望退職の募集や配転・出向、新卒採用中止、パートタイマーの雇止めなどの方法で、解雇を回避する手段を講じたかどうかが重要となります。

⑶ 人選の合理性

整理解雇において、どの従業員を解雇するかについての選定が合理的でなければなりません。特定の従業員を不当な理由で選んだ場合や、差別的な基準で人選が行われた場合には、整理解雇が無効とされる可能性があります。

⑷  手続きの妥当性

企業は、整理解雇を行うにあたって労働者や労働組合に対して、整理解雇の必要性や人選基準、解雇の時期や方法などについて十分な説明を行わなければなりません。

3 おわりに

以上のように、整理解雇(リストラ)は、労働者に落ち度があるわけではないのに解雇されるというものであるため、4要件に基づいて有効性を判断することになります。

 整理解雇でお悩みの方は、シャローム綜合法律事務所にご相談ください。

(弁護士 山本祥大)

【婚姻費用とは】

【婚姻費用とは】

1 はじめに

別居を考える際に、まず気になるのが生活費の問題です。特に、専業主婦や子どもがいらっしゃる場合には、別居中の生活費をどのように確保するかが大きな課題となります。今回のコラムでは、婚姻費用の基本的な考え方や、その請求額について解説します。

2 婚姻費用とは

夫婦が別居している場合でも、収入の低い配偶者は収入の高い配偶者に対して、婚姻費用を請求することができます。婚姻費用には、衣食住費、医療費、教育費、娯楽費などが含まれます。

3 いくら請求できるのか

婚姻費用の額は、夫婦の収入や生活水準、扶養すべき子どもの人数などにより異なります。具体的な金額を算出するためには、裁判所が提供する「算定表」を参考にすることが一般的です。この算定表では、夫婦それぞれの収入や子どもの年齢などを考慮して、婚姻費用の額を算出します。

例えば、

①妻の年収200万円、夫の年収600万円、5歳の子供1人を妻が監護している場合

妻は夫に対し、婚姻費用として月10万円を請求することができます。

②妻が無収入、夫の年収400万円の場合

妻は夫に対し、婚姻費用として月額7万円を請求することができます。

4 まとめ

別居をご検討の方や、別居しているが婚姻費用が支払われていない方、婚姻費用を請求されている方は、お気軽にシャローム綜合法律事務所までご相談ください。

弁護士が、婚姻費用の適正金額、請求方法、別居や離婚に向けた方針についてアドバイスいたします。

 

(弁護士 山本祥大)

「M&Aに関するトラブルにご注意ください」(中小企業庁)

「M&Aに関するトラブルにご注意ください」(中小企業庁)

中小企業庁が、中小M&Aガイドラインを改訂したのと同タイミングで、「M&Aに関するトラブルにご注意ください」との注意喚起を行っています。

従前より同庁は、情報提供受付窓口を設置してM&Aトラブルの実例収集を実施しておりましたが、この度、トラブル事例として以下の二点を掲載しています。

① クロージング後、個人保証が解除されなかった事例

②    譲渡対価の分割払い、退職慰労金の後払いが株式譲渡契約の条件となっているものの、履行されなかった事例

表明保証違反等といった通常型のケースではなく、確信犯的なトラブル作出型を紹介していることから、この度のルシアンホールディングスを念頭に置いた注意喚起であると思われます。

中小企業庁は、「少しでも違和感を感じる場合は、弁護士や各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターにご相談ください。」と記載しています。

M&Aトラブルにお困りの方は、シャローム綜合法律事務所までお問い合わせください。

(弁護士 中川内 峰幸)

「M&A仲介トラブル」防止へ新たな対策、中小企業庁が指針改定(朝日新聞)

「M&A仲介トラブル」防止へ新たな対策、中小企業庁が指針改定(朝日新聞)

中小企業庁が、中小M&Aガイドラインを改訂しました。

「M&A仲介トラブル」防止へ新たな対策、中小企業庁が指針改定(朝日新聞)

当初は今秋にもと言われていた改訂時期ですが、相当程度前倒しとなった模様です。

ただし内容自体は、従前よりなされていた議論の域を出ず、特筆すべきものはありませんでした。数日前に公表された業界団体の自主ルール同様、これにより抜本的にM&Aトラブルが根絶されるという事態にはつながらないでしょう。

業法が整備され、免許制が敷かれるまでの間は、やはりM&Aの売主・買主双方が当事者意識をもって自衛するより他はないものと考えます。

(弁護士 中川内 峰幸)

M&A仲介「悪質な買い手」情報共有へ 業界団体が10月に運用開始(朝日新聞)

M&A仲介「悪質な買い手」情報共有へ 業界団体が10月に運用開始(朝日新聞)

藤田知也記者の表題の記事に触れました。

M&A仲介「悪質な買い手」情報共有へ 業界団体が10月に運用開始:朝日新聞デジタル (asahi.com)

業界団体であるM&A仲介協会が、悪質な買い手企業を登録する特定事業者リストを策定し、協会内で共有するとのことです。登録された買い手との取引までは禁止しないということですが、同リストに載ってしまえば信用を失い、同買い手企業は、以後M&Aができなくなるということらしいです。

残念ながら、効果薄でしょう。他の会社を新設して買い手となればいくらでもかいくぐれるだけの話です。役員も同リストに載せるのかは、同記事からは不明ですが、隠れ蓑として第三者を就任させればよいだけです。実際、ルシアンホールディングスの件も、関連会社を噛ませて取引している案件があるわけですし、私が相談を受けている事件でも、子会社を噛ませたりして本丸は前面に出てこないようにしているケースがあります。

債務整理におけるCICやJICC、KSCといったブラックリストとは異なり、実に簡単な抜け穴があるこのリストは、とても実効性があるようには思えませんが、そこには、何かしら対策を講じているという姿勢を示さなければならないという業界団体側の思惑があるのでしょう。

M&Aトラブルのご相談は、シャローム綜合法律事務所までお問い合わせください。

(弁護士 中川内 峰幸)

【残業代請求の消滅時効】

【残業代請求の消滅時効】

1 はじめに

 債権者が、一定期間権利行使をしなかった場合、債権を消滅させることができ、これを消滅時効といいます。残業代が支払われていない場合、残業代を請求する権利も債権ですので消滅時効があります。

 今回のコラムでは、残業代請求の消滅時効についてご説明します。

2 残業代請求の消滅時効

 令和2年4月1日以降に支払期日が到来する残業代請求権は、3年が消滅時効の期間となります。労働基準法では、残業代請求権の消滅時効は5年と規定されていますが、当分の間は3年とされています。

 残業代請求の消滅時効の起算点(いつから期間を計算するのか)は、各月の賃金の締め日ごとになります。そうすると、3年以上会社で勤務をしていて残業代が支払われていない場合には、各月の賃金の締め日から3年が経過すると、その月の残業代を請求することができなくなってしまいます。

3 時効を止める方法

 内容証明郵便によって会社に残業代を請求すると、6カ月間は時効が完成しません。

 また、裁判上の請求(訴訟や労働審判)をしている間も時効は完成せず、裁判の判決が確定した場合などには、これまでの時効期間がリセットされます。

  弁護士が依頼を受けた場合には、直ちに会社に対し受任通知を送付することで、時効の進行を止めます。そして、6か月間の間に会社と交渉をし、6カ月で交渉がまとまらない場合には訴訟か労働審判を申し立てます。

4 おわりに

 残業代請求権には3年で消滅時効が成立します。そのため、未払いの残業代があったとしても3年を経過すると会社に請求することは難しくなります。残業代請求でお悩みの方は、シャローム綜合法律事務所にご相談ください。

(弁護士 山本祥大)

【残業代の計算(概算)方法】

【残業代の計算(概算)方法】

1 はじめに

 従業員が、1日8時間、週40時間を超えて労働した場合、残業代を請求することができます。しかし、世の中では「サービス残業」という言葉があるように、会社が従業員に対して適正な残業代を支払っていないことが多く見受けられます。

 今回のコラムでは、直ぐに確認できる残業代の計算(概算)方法についてご紹介します。

2 残業代の計算方法

 残業代は、以下の計算式によって算出することができます。

  [ 残業時間= 時間単価 × 残業した時間 × 割増率 ]

  「時間単価」とは、残業代計算の基礎となる1時間当たりの賃金のことです。

 時間単価は、以下の計算式で算出します。

  [ 時間単価= 月の賃金 ÷ 月所定労働時間(173.8時間) ]

  ※月所定労働時間は事案によって異なりますが、173.8時間が上限の月所定労働時間となります。

 残業時間は、1日8時間・週40時間を超えて労働した時間をいいます。

 割増率は、以下のとおりです。

  1日8時間、1週間40時間を超えたとき:25%増し

  法定時間外労働が1か月60時間を超えたとき:50%増し

  法定休日に勤務したとき:35%増し

  深夜(22時~5時)に勤務したとき:25%増し

  ※休日労働の場合は、1日8時間、1週間40時間を超えたとしても35%増しのままとなります(深夜割増は適用されます)。

3 おわりに

 残業代の計算方法についてご説明しましたが、あくまで概算です。

 また、残業代請求では、労働時間や賃金単価、固定残業代の有無など、争点となり得 るポイントが多くあります。残業代でお悩みの方は、シャローム綜合法律事務所にご相 談ください。

(弁護士 山本祥大)