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医療法人・クリニックで起こるM&Aトラブル

医療法人やクリニックの承継で失敗したというご相談も、近年増加傾向にあります。

薬局や介護業界と同様に、後継者不在・地域医療の維持・制度対応といった課題を背景として、医療分野でもM&Aが活発化しています。

とはいえ、医療業界のM&Aは、一昔前の「個人開業医の承継」から、現在では医療法人間の再編や、異業種からの参入による買収へと変化しています。

しかし依然として、中小規模の医療法人・クリニックの譲渡が多く、それに伴うトラブルも少なくありません。

特に医療業界の場合、以下のような業界特有のM&Aリスクが存在します:

– 医療法人の持分払戻しが高額になり、資金繰りが破綻(金融機関からの融資も難航)

– 診療報酬請求(レセプト)に不備があり、行政指導や返還命令が発生

– 医師・看護師の退職により診療体制が維持できなくなる

– 医療機器の故障や契約不備が買収後に判明

– 行政手続き(保健所・厚生局等)に漏れがあり、診療継続に支障が出る

これらは、表面上の財務資料だけでは見抜けないことが多く、医療法・労働法・税務・行政手続の複合的な視点が必要になります。

医療法人のM&Aで「こんなはずでは…」となった方も、シャローム綜合法律事務所までどうぞお気軽にご相談ください。

(弁護士 中川内 峰幸)

製造業のM&Aトラブル

製造業のM&Aは、事業承継やグローバル展開の一環として活発化しています。

ただしその一方で、簿外債務・設備投資・人材不足などの目に見えにくいリスクが多く、買収後に想定外のコストが発生するケースも珍しくありません。

当事務所にも、製造業のM&Aでトラブルに発展したとしてご相談に来られる方が少なくありません。

特に、地場の中小企業を対象としたM&Aでは、帳簿上の数字では把握できない「現場の勘」が求められる場面も多く、法務と実務の融合がカギとなります。しかしその点につき詳細なデュー・デリジェンスの実施が欠如していたり、あるいはその結果を契約書に落とし込む作業が杜撰だったりした場合に、大きな紛争となりえます。

代表的なトラブル類型は以下の通りです:

– 工場設備の減価償却が不適切で、保守費用が想定以上にかかった

– 原材料在庫の評価が杜撰で、実は劣化品(陳腐品)が多数混在していた

– キーマンの退職後に取引先との関係が崩れた

製造業のM&Aで失敗したという方も、シャローム綜合法律事務所にぜひお任せください。

(弁護士 中川内 峰幸)

調剤薬局のM&Aトラブル

調剤薬局のM&Aでトラブルが発生したというご相談を頂戴することが少なくありません。

IT、製造、介護、不動産、美容、教育あたりの業界においてM&Aが実に活発ですが、調剤薬局の業界においても、未だM&Aは盛んですね。

とはいえ、一時と比べ、その内容は変容してきているようです。パパママ薬局と呼ばれる小規模薬局の譲渡が多かった時期を経て、近年では、大手調剤薬局間のM&Aや、ドラッグストアチェーンによる買収が進行しています。しかし依然として調剤薬局業界における中小M&Aの数は非常に多いことから、それに付随して、M&Aトラブルも多発しています。

特に調剤薬局業界においては、人材依存度が高く、地域密着型であることから、買収後の運営体制が整わないと収益悪化リスクが高いという特色があります。買収後にキーマンとなる薬剤師が退職し、新規の採用にも失敗したというケースは珍しくありませんが、これは他の業界にも共通するM&Aの難しさでもあります。特有のトラブル類型としては、保険請求の不備による行政指導を受けたというケースも目にします。

薬局のM&Aで失敗した!という方も、シャローム綜合法律事務所まで是非お気軽にお問い合わせください。

(弁護士 中川内 峰幸)

ダイヤモンド・オンライン「M&A仲介業界が再び戦慄!中小企業を少なくとも19社買収した~」

標記の記事に触れました。

M&A仲介業界が再び戦慄!中小企業を少なくとも19社買収したマイスホールディングスを元子会社が提訴、2社を引き合わせた大手M&A仲介会社とは? | M&A仲介 ダークサイド | ダイヤモンド・オンライン

M&Aの後、親会社が買収した子会社の資金を吸い上げ、当該子会社が破綻するというケースが散見され、問題視されていますが、これを不法行為と構成して訴訟を申し立てたようです。

原告は元子会社ということですので、M&A後に元オーナーが株を買い戻したようです。買戻しができないケースも多いですが、買戻しが実現した本ケースのような場合には、元子会社が原告となって損害賠償を請求する道も開けます。訴状を見てみたいところですね。

(弁護士 中川内 峰幸)

【日経】中小企業のM&A仲介に資格制度 26年度、トラブル防ぎ市場活性化

標記の記事に触れました。

中小企業のM&A仲介に資格制度 26年度、トラブル防ぎ市場活性化 – 日本経済新聞

M&A仲介業にようやく資格制度が創設されるようですね。

米国を参考に、制度運営は民間に委託するとのことですが、是非とも実効性のある内容としていただきたいです。

仲介会社が杜撰な業務を行ったことにより、売主・買主が被害を被ったという悲惨なケースのご相談は、私のもとに日々寄せられています。

この資格制度によって仲介会社のレベルが向上し、また悪質な仲介会社が淘汰されればと心より願いつつ、引き続き注目していきたいと思います。

(弁護士 中川内 峰幸)

弁護士によるM&Aの契約書チェックを承ります!

その株式譲渡契約書、大丈夫ですか?

中小M&Aにおける契約書の重要性に関しては以前のブログでも記載しましたが、M&A実施後のトラブルのご相談を日々・多数頂戴するにつけ、成約前の契約書チェックがいかに大切であるかを痛感しております。

これは「front-end transaction costs」と「back-end transaction costs」の問題ともいわれます。前者は、事前に弁護士費用をかけて細かい契約書を作って、事後のM&Aトラブルの発生を防止しようとする考えで、後者は、契約書はコストをかけずに作成した上で、後々のM&Aトラブルは事後的に解決すれば足りるという考えです。こう聞くと、どちらも一理あるような気がしてきますが、これは大規模なM&Aに関しての議論ではないかと考えます。後継者問題を背景に昨今増加している中小のM&Aのようなケースにおいては、事前の弁護士による契約書チェックを受けたとしても、それが過大な負担となるほどのコストとは通常なりえません。むしろ、なけなしのリーガルチェック費用を惜しんだがゆえに、後日相当な金額を相手方から請求されるという事態になりかねません。また、経済的な問題だけでなく、相手方からの請求への対応や応訴の煩を踏まえると、時間的・労力的なコストも要することとなりえます。正に「損して得取れ」ということです。

当事務所が注意喚起を申し上げたいのは、次のような事項です。

 どのような小さな案件であれ、後日の紛争を未然に防ぐためには、弁護士による事前の契約書チェックが必要です!

 M&Aポータルサイトからダウンロードした契約書の内容を理解することなくそのまま利用するなど、危険極まりない行為です!

 また、両手取引の仲介会社は、あなたの味方ではありません。「仲介会社が作成した契約書だから安心だ」と考えることも早計です!

成約の前に、弁護士によるリーガルチェックをご利用ください!

そのような考えから、当事務所では、従来は、既に発生してしまったM&Aトラブルに関して事後的な紛争解決(示談交渉・訴訟等)のお手伝いをしておりましたが、この度より、契約締結前のリーガルチェックのご要望にもお応えすることとなりました。

譲渡価額が低く、「このような取引には弁護士によるチェックは必要ないだろう」という案件こそ、後々紛争になった際に「泣き寝入り」を強いられる傾向が高いと言えます。特に、「1円譲渡」などといった場合には、相手方が問題ある悪質な買主の可能性も疑われますので、弁護士が契約書チェックをするに際して、そのあたりの被害発生も防止できればと考えております。これは振り込め詐欺を未然に防止するような作業ですね。

契約書チェックの弁護士費用は、事案や契約内容の複雑性により異なりますが、比較的簡易なケースにおいては、5万円+税~で承ることを想定しております。詳しくはお見積もりさせていただきますので、お気軽にお問い合わせください。

なお、M&Aトラブルに関しましては、全国対応しておりますので、遠方のお客様からのお問い合わせもお待ちしております。

M&Aトラブルを未然に防ぐために、弁護士によるリーガルチェックを是非ご検討ください!

M&Aにおける契約書の重要性

M&Aの実施後、不幸にも契約の相手方とトラブルとなってしまった場合、まずは訴外での交渉を行うこととなりますが、これが奏功しなかった場合、裁判所に訴訟を申立てるということとなります。

多くの場合は、金銭請求という形で相手方へ請求をなすこととなると思われます。そしてその場合、請求する側が、その請求権の存在を証拠でもって立証しなければなりません。証拠としては、争点との兼ね合いで様々なものが想定されますが、まずもって重要となるのは、契約書です。株式譲渡であれば株式譲渡契約書、事業譲渡であれば事業譲渡契約書ですが、タイトルは特にどうでもよいのです。最終契約書などと題する場合もあるでしょう。

さて、裁判所が証拠により事実を認定する場合、処分証書を重視します。処分証書とは、意思表示その他の法律行為を記載した文書であり、処分証書の例としては、判決書のような公文書のほか、遺言書や売買契約書などがよく挙げられます。M&Aにおいて作成される上記契約書も、処分証書と解されます。つまり、訴訟をする上では、極めて重要で基本的な証拠となります。しかし、この契約書が実に杜撰な例が多いのです(念のため申し上げておきますが、中小のM&Aに関するお話です。)。

ポータルサイトを利用したM&Aの場合には、当該サイトからダウンロードできる契約書の雛形を、当事者が必要に応じて修正の上利用するということがあるようです。ですので、内容的には滅茶苦茶というケースが少なくありません。事業譲渡の譲渡対象物が記載されていないという契約書も見たことがあります。また、間に仲介会社が入ったという案件でも、当該案件の特殊性に即して通常の契約の特則を置いたりする場合、同特則の規定内容が十分に練られておらず、これが元となり後々トラブルに発展するというケースも目にします。

契約書は、売主と買主の間で形成された合意内容を推認させる処分証書であることから、一旦これを作成(署名・押印)してしまった以上、後になって「そのようなことを約束した覚えはない」などと言ったところで、それを覆す(法的拘束力を争う)には多大な困難を伴います。ですので、契約書の重要性を十分認識した上で、「M&A仲介会社が作成したものだから大丈夫だろう」「あまり細かいことを言うと相手方の気分を害してしまうのではないだろうか」などと考えたりせず、不安があればその点をきちんと解消してから調印すべきです。後々のM&Aトラブルを防止するためには、事前に弁護士による契約書チェックを行うことが最も重要と考えます。

さて、しかしそのようなチェックを経ずに、実際にトラブルになってしまった。そして契約書の内容が実に心もとない。そのような場合にも、今からリカバーが可能かどうか、是非お問い合わせください。詳しくご事情をお聞きして、お客様の事案に則した最もベターな解決法を検討させていただきます。

(弁護士 中川内 峰幸)

表明保証違反等のM&Aトラブルのご相談は、シャローム綜合法律事務所へ!

表明保証違反を請求されている方からのご相談が増加しています

株式譲渡、事業譲渡で失敗していませんか?

シャローム綜合法律事務所では、M&Aのトラブルにお困りのお客様から、日々多数のご相談を頂戴しております。まずはお気軽にメールかお電話でお問い合わせください。

M&Aにまつわる紛争の種類は多岐に渡りますが、その中でも一番多いのは、やはり表明保証違反ではないかと思われます。

表明保証違反って?

まず、表明保証とは何かですが、お手元の契約書(株式譲渡契約書や事業譲渡契約書など)をご覧ください。「表明保証(ひょうめいほしょう)」という条項が見つかるはずです。

表明保証とは、M&Aの契約当事者の一方が、他方に対して、取引対象や契約当事者に関する契約の重要な要素に関して、特定の時点において一定の事項が真実かつ正確であることを「表明」し、その表明した内容を「保証」するものです。この表明保証に違反することが、文字どおり表明保証違反です。

そして、表明保証違反が判明した場合、契約内容に従って、これと相当因果関係のある損害につき、相手方に対して損害賠償請求や補償請求をすることが可能となります。

表明保証の法的責任は、損害担保説が通説とされており、無過失責任と解釈されることが多いでしょう(詳しくはお問い合わせください。)。

「表明保証違反だと言われた」

「損害賠償を支払わなければ訴訟する(告訴する)」

などと契約の相手方から言われたとしてご相談に来られる方が増加しております。

表明保証は契約上、売主も買主もどちらもが行うことが通常ですが、表明保証違反による補償請求をされるのは、ほとんどが売主となります。

「たしかに表明保証違反があるかもしれない」

と自認されている場合でも、実際に相手方の請求に素直に応じるべきか否かは要検討です。

あるいは、

「本当に表明保証違反となるのかどうか分からない」

「表明保証違反なんて相手方のでっち上げだ」

という方からのご相談も数多く頂戴しております。

手遅れとなる前に、お早目のご相談を!

このような状況に身を置かれては、大変不安なお気持ちであろうと拝察いたします。

M&Aの契約においては、表明保証違反を含む相手方への責任追及に関しては、短期間の期間制限を設ける場合がほとんどです。

まずは取り急ぎ弁護士にご相談ください。一緒に最善の解決策を見つけ出しましょう!

法律相談のネット予約はバナーをクリック!

【弁護士紹介】

中川内峰幸(なかがわち みねゆき)

・M&Aトラブル対応実績多数。

・表明保証違反やM&A仲介会社との紛争に精通。

・企業内弁護士として多数のM&A案件に携わる。現在は、シャローム綜合法律事務所の代表弁護士。

・金融機関や中小企業からの相談多数。

・M&Aトラブルに関し、朝日新聞、週刊東洋経済、ニッキン、テレビ大阪等メディア掲載実績多数。

 

【M&Aトラブル】悪質な「売主」の問題

中小のM&Aにおいて、悪質な買主(買収した企業の資金を抜き取って失踪したり、契約に反して経営者保証の解除に応じないなど)について昨今問題視されていますが、多少違和感を覚える風潮です。というのは、詐欺的な手法を用いるのは何も買主に限られる話ではありません。悪質な売主も存在するのです。

最近ご相談が多いのは、YouTubeチャンネルの売買。事業譲渡ですね。株式譲渡のみならず、事業譲渡もM&Aです。

これが結構な高額で取引されておりまして、その多くはM&Aのマッチングサイト(プラットフォーム)を利用していることが特色です。つまり、個人間で売り買いがなされ、その間に助言を行うような第三者を介さない取引形態です。多くの場合、利用者は取引が成約した場合にプラットフォームに費用を払います。

騙されるのは買主の方で、開設して間もないYouTubeチャンネルにも関わらず、「月30万円の収益が出ています」「台本、編集等の知識がない方でも簡単に運営できます」「ネタが豊富で高単価なジャンルです」「属人性なしなのでフル外注が可能です」などの謳い文句に誘引されて取引に入ります。譲渡理由につき、「別事業に注力するため、スピード重視でお願いします」などという内容が掲載されていることも多いですね。

このようなYouTubeチャンネルが売りに出されていて、数十万円、あるいは数百万円で買うわけです。しかし購入後、当初売主から聞かされていたような収益が出ないことが判明して、買主はおかしいと感じることになります。このようなご相談は、最近ものすごく増えてきています。

契約書を見てみると、実に杜撰な内容でして、それもそのはず、マッチングサイトが用意している雛形を当事者同士が、内容を多少いじって利用していると。もちろんDDも行っていませんし、弁護士などの専門家も入っていません。こうなると、後になって紛争を解決するのにもなかなか厄介な状態です。

これらの全てが詐欺的案件だとはいいません。真っ当な売主が、真っ当なチャンネルを譲渡した結果、買主側の運営手法に問題があり収益が発生しないケースもあるでしょう。しかし、開設して数か月しか経っていないにも関わらず、一定の収益があると謳い、これを急いで譲渡するという共通項があり、こういった類のトラブルが非常に目立つようになっているのは確かです。もちろん、買主の側にも落ち度はあります。本当に信用できる案件であるのか、もっと詳細に調査する必要があったといえます。彼ら(彼女ら)を見ていますと、どうやら、フリマアプリで「モノ」を売り買いするのと似たような感覚で「事業」を売買しているようにも思えます。しかし事業譲渡もれっきとしたM&Aであり、M&Aはそんなに簡単なものではありません。

何でもフリマアプリで売り買いできる時代のようですが、M&Aプラットフォームの運営会社は、このようなトラブルが発生していることをどのように捉えているのでしょうか? そもそも、株式や事業をプラットフォームで売買すること自体の是非も問われるのではないでしょうか?

悪質な売主は、別にYouTubeチャンネルの売主に限りません。売買行為が行われる以上、そこに詐欺的な手法を用いる輩が発生することは全く不思議なことではありません。それが土地であれ、株式であれ、YouTubeチャンネルであれです。ただし、不動産や法人の譲渡と比べて規模が小さく、また譲渡後の運用・運営も楽に見えることから、副業感覚でさほど深く検討することなく購入に走る買主が多いのかもしれません。こうなるとM&Aトラブルというよりは、消費者問題といった方が適当かもしれません。

さて、以上述べましたとおり、問題があるのは何も買主だけでなく、売主においても同じなのです。そして売主も買主も、自らが契約の当事者となるのですから、不測の損害を被らないよう、当事者意識をもって自衛しなければなりません。安易に儲け話に乗るのではなく、慎重に慎重を重ねて検討すること。そして自分だけでは分からない場合には、弁護士などの専門家の意見を聞くこと。それが重要です。騙された方にとっては実に厳しい言い方となってしまいますが、そのような自衛を怠ったことによるトラブル発生の場合には、「泣き寝入り」ではなく「自業自得」と言われてしまっても仕方がないのかもしれません。

また、上記M&Aプラットフォームの運営会社も、今後何らかの対策を立てる必要があると考えます。

(弁護士 中川内 峰幸)

毎年恒例の裁判所の桜です。満開にはもう少しでしょうか。