オーナーから事業承継の打診を受けたときに注意すべきM&A契約の落とし穴

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〜“うまい話”の裏に潜む構造的リスクと実務対応〜

信頼関係があるからこそ、契約は慎重に!

美容院・鍼灸院・飲食業など、長年勤めた従業員に対してオーナーが事業を譲渡するケースは少なくありません。

「そろそろ君に任せたい」——そんな言葉を受け、感謝と責任感からM&A契約に応じたものの、譲渡後に深刻なトラブルに直面するケースが後を絶ちません。本記事では、こうした事業承継型M&Aに潜む構造的リスクと、契約前に取るべき実務対応を解説します。


⚠️よくあるトラブル事例

1. 格安譲渡の裏に資金流出

「1円譲渡」といった好条件に見える契約でも、実際には会社資金がオーナーに流出しているケースがあります。

例:オーナーが会社に貸し付けていたと主張し、譲渡直後に資金返還を要求 → キャッシュが枯渇

2. 高額な経営者保証の引き継ぎ

買主が知らないうちに(言われるがままに書面に押印した結果)、金融機関への個人保証を引き継がされていたケースも。 → 保証債務の履行を求められ、個人資産に影響

3. 売上の一部を“経営指導料”として支払う契約

譲渡後もオーナーに毎月数十万円を支払う契約が規定されており、実質的に利益が残らない構造に。

4. 表明保証違反や債務不履行に関する免責条項

簿外債務が判明した場合であっても、契約書に「売主は一切責任を負わない」と明記されているケースも。 → 紛争になっても当該責任制限条項がネックとなる場合も


📌背景にある構造的問題

• オーナー(売主)と従業員(買主)の交渉力の差 → 長年の上下関係が影響し、「言われるがまま」契約に応じてしまう

• 契約書の内容を十分に理解しないまま署名 → 弁護士による事前チェックがないと、重大なリスクを見落とす

• 業績不振の事業からオーナーが“脱出”するためのスキームとして悪用されることも


🔧実務対応のポイント

• 契約締結前に、M&Aトラブルに詳しい弁護士へ相談すること → 表面上の条件だけでなく、契約条項の裏にあるリスクを精査

• 譲渡対価・債務・保証・役員報酬など、金銭的負担の全体像を把握する

• 免責条項や経営指導料など、譲渡後の継続的支払義務に注意


Q1: 事業承継型M&Aとは何ですか?

A: オーナーが自社の事業や株式を、従業員や関係者に譲渡するM&Aの形態です。信頼関係が前提となる一方、契約内容が曖昧になりがちです。M&A仲介業者が間に入らない場合も散見されます。

Q2: 1円譲渡は本当に得なのでしょうか?

A:表面的には好条件に見えますが、会社資金の流出や債務の引き継ぎが隠れている場合があり、慎重な確認が必要です。

Q3: 経営者保証を引き継ぐリスクとは?

A: 金融機関への個人保証を引き継いでしまうと、会社が支払をできなくなった場合に、買主が私財で債務を負う可能性があります。

Q4: 表明保証違反があっても売主に責任を問えないことはありますか?

A: 契約書に責任限定条項や免責条項がある場合、売主に責任を問うことが困難になるケースがあります。

Q5: 契約前に弁護士に相談するメリットは?

A: 契約書のリスクを事前に把握し、交渉や修正を通じて不利な条件を回避できます。契約後では紛争解決が難しくなるため、早期相談が重要です。


📣まとめ:信頼関係があるからこそ、契約は冷静に!

事業承継型M&Aは、信頼関係に基づくからこそ、契約内容のチェックが疎かになりがちです。

しかし、譲渡後にトラブルが発生すると、買主が個人で多額の負担を背負うこともあります。

契約締結前に、M&Aトラブルに精通した弁護士へ相談することが、最も確実な予防策です。


📩ご相談はこちらから

事業承継型M&Aでの契約リスクに不安を感じている方は、シャローム綜合法律事務所へご相談ください。

実務に精通した弁護士が、契約書の精査から交渉支援まで一貫して対応します。 まずは下記フォームよりご相談ください。遠方のご相談者様は、オンライン対応も可能です。

【弁護士紹介】

中川内峰幸(なかがわち みねゆき)

・M&Aトラブル対応実績多数。

・表明保証違反やM&A仲介会社との紛争に精通。

・企業内弁護士として多数のM&A案件に携わる。現在は、シャローム綜合法律事務所の代表弁護士。

・金融機関や中小企業からの相談多数。

・M&Aトラブルに関し、朝日新聞、週刊東洋経済、ニッキン、テレビ大阪等メディア掲載実績多数。