M&Aにおける契約書の重要性
M&Aの実施後、不幸にも契約の相手方とトラブルとなってしまった場合、まずは訴外での交渉を行うこととなりますが、これが奏功しなかった場合、裁判所に訴訟を申立てるということとなります。
多くの場合は、金銭請求という形で相手方へ請求をなすこととなると思われます。そしてその場合、請求する側が、その請求権の存在を証拠でもって立証しなければなりません。証拠としては、争点との兼ね合いで様々なものが想定されますが、まずもって重要となるのは、契約書です。株式譲渡であれば株式譲渡契約書、事業譲渡であれば事業譲渡契約書ですが、タイトルは特にどうでもよいのです。最終契約書などと題する場合もあるでしょう。
さて、裁判所が証拠により事実を認定する場合、処分証書を重視します。処分証書とは、意思表示その他の法律行為を記載した文書であり、処分証書の例としては、判決書のような公文書のほか、遺言書や売買契約書などがよく挙げられます。M&Aにおいて作成される上記契約書も、処分証書と解されます。つまり、訴訟をする上では、極めて重要で基本的な証拠となります。しかし、この契約書が実に杜撰な例が多いのです(念のため申し上げておきますが、中小のM&Aに関するお話です。)。
ポータルサイトを利用したM&Aの場合には、当該サイトからダウンロードできる契約書の雛形を、当事者が必要に応じて修正の上利用するということがあるようです。ですので、内容的には滅茶苦茶というケースが少なくありません。事業譲渡の譲渡対象物が記載されていないという契約書も見たことがあります。また、間に仲介会社が入ったという案件でも、当該案件の特殊性に即して通常の契約の特則を置いたりする場合、同特則の規定内容が十分に練られておらず、これが元となり後々トラブルに発展するというケースも目にします。
契約書は、売主と買主の間で形成された合意内容を推認させる処分証書であることから、一旦これを作成(署名・押印)してしまった以上、後になって「そのようなことを約束した覚えはない」などと言ったところで、それを覆す(法的拘束力を争う)には多大な困難を伴います。ですので、契約書の重要性を十分認識した上で、「M&A仲介会社が作成したものだから大丈夫だろう」「あまり細かいことを言うと相手方の気分を害してしまうのではないだろうか」などと考えたりせず、不安があればその点をきちんと解消してから調印すべきです。後々のM&Aトラブルを防止するためには、事前に弁護士による契約書チェックを行うことが最も重要と考えます。
さて、しかしそのようなチェックを経ずに、実際にトラブルになってしまった。そして契約書の内容が実に心もとない。そのような場合にも、今からリカバーが可能かどうか、是非お問い合わせください。詳しくご事情をお聞きして、お客様の事案に則した最もベターな解決法を検討させていただきます。
(弁護士 中川内 峰幸)
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