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【自己破産】どうしても車を残したいんですが・・・【個人再生】

【自己破産】どうしても車を残したいんですが・・・【個人再生】

借金問題でご相談に来られる方の中で、どうしてもお車を残しておきたいというご要望をお持ちの方がいらっしゃいます。

まず、その車が申立人以外の、例えば配偶者名義の車である場合には、そもそも問題がありません。申立人が債務整理を行ったとしても、配偶者の財産関係には影響がないからです(ただし、申立人が保証人になっている場合などは話が変わってきます。)。

次に、その自動車のローンが残っているか否かで場合分けをする必要があります。ローンが残っていない場合には、その財産的価値次第では、破産の場合にもこれを残しておくことが可能な場合があります(財産的価値が高い場合には、処分が必要となります。)。個人再生の場合には、清算価値の問題となります。

そして、ローンが残っている場合は、債権者が当該車を引き上げる形となりますので、自己破産でも、個人再生でも、車を残すことは原則できません。それを避けるためには、任意整理を選択して、自動車ローンの債権者を除外するか、あるいは、第三者弁済により残ローンを一括返済することの可否を検討することとなります。

さて、上に「原則」できないと記載したのには理由があり、個人再生手続の場合には、ローンの残ったお車を残すことができる場合が存在するのです。すなわち、債権者との間で「別除権協定」というものを締結し、かつ、裁判所が認めてくれさえすれば、引き続き月々のローンを支払うことにより、車を残すことも不可能ではありません。

しかし、これはどのような場合でもできるというものではありません。例えば、当該自動車を使って商品の配達をしている場合など、申立人の事業継続に必要不可欠といえるケースであれば、裁判所も別除権協定を認めてくれる可能性がありますが、単に通勤に必要だとかといった理由しかない場合には、認めてもらえません。公共交通機関を利用すればいいではないかと言われておしまいです。同様に、介護で送迎のため必要だという理由の場合にも、単にそれだけでは認められない場合が多いでしょう。なかなかハードルは高いと考えていただいた方がよいと思います。

とはいえ、当事務所では、別除権協定を利用してお車を残すことができたという事案も数多く経験しております。具体的にご自身のケースでお車を残すことができそうかお知りになりたい方は、神戸のシャローム綜合法律事務所までお気軽にお問い合わせください。相談は無料です。詳しくは、下のバナーをクリックください。

(弁護士 中川内 峰幸)

生活保護の方の債務整理

生活保護の方の債務整理

生活保護を受給されている方々からの借金問題のご相談も、日頃より多数いただいております。

先に結論を申し上げますと、生活保護を受けている方は、自己破産一択です。

生活保護費は、文字通り生活のために使わねばなりませんので、保護費から借金の返済資金に充てることはできません。そのような事実が発覚した場合には、最悪の場合、保護が取消となってしまうおそれがありますので、くれぐれもご注意ください。ですので、個人再生や任意整理は最初から採りえず、自己破産しか手段がないということになります。

また、弁護士費用の確保も困難でしょうから(親族や知人の方が援助してくれるというのであれば別ですが)、法テラスを利用して委任するということになります。その際には、法テラスより援助決定をもらうために、生活保護の受給証明書か開始(変更)決定書(ともに3か月以内に発行のもの)又は受給者証(現状を反映しているもの)が必要ですので、あらかじめご用意ください。

時折、ケースワーカーさんに借金の話をすると保護が取消になるのではないかとご不安に思われている方がいらっしゃいますが、逆です。ケースワーカーさんに内緒で借金がどんどん膨らんでいく方が問題であり、借金の事実を知るに至ったケースワーカーさんの方から弁護士のところへ相談に行きなさいと言われて来所される方がほとんどです。先にも述べましたが、保護費から返済して秘密裏に解決しようなどとは、決して考えないでください。

なお、保護費の受給が一時的なもので、近く就労を予定しており保護が打ち切られるような場合は、個人再生や任意整理といった手段も選択肢に入ってくる可能性があります。実際にそのような方もおられました。

生活保護を受給されており債務問題に頭を悩ませていらっしゃる方は、神戸のシャローム綜合法律事務所までお気軽にお問い合わせください。相談は無料です。詳しくは、下のバナーをクリックください。

(弁護士 中川内 峰幸)

医師・歯科医師の債務整理

医師・歯科医師の債務整理

医師や歯科医師の方々からの借金問題のご相談も、実は結構お受けしています。

これらのご職業は所得が高いことから、債務額もかなりの高額に上っていることが多いという実感があります。

ただし、選択する手続きは、勤務医と開業医とで大きく変わってきます。勤務医の場合には、通常の会社員と同じく、給与所得者として自己破産・個人再生・任意整理の中から適当な手段を選択することとなります。面白いのは、通常の会社員でしたら不可能な金額の債務を、任意整理で終わらせるということがあります。普通のサラリーマンですと、1000万円を優に超える債務を任意整理で支払っていくという芸当はなかなかできないと思いますが、さすがお医者さんパワーといったところでしょうか。

しかしクリニック等をご自身で経営されている場合には、かなり複雑な手続きとなります。開業にあたり日本政策金融公庫等から多額の借入を行っていることがほとんどですので、さすがにこれは任意整理で解決できる金額ではありません。また、医療機器のリース契約等もあり、その対象となっている物件を引き上げられてしまうと、たちまち診療ができなくなるというケースも想定されます。従業員も多数雇用していることがほとんどでしょう。税金の滞納額が多額に上っている場合もありますし、診療報酬が差押を受けていることもあります。そして、廃業するとなると、患者さんにも迷惑がかかることになります。

案件によりますが、M&Aをお勧めする場合があります。当該クリニックを第三者に適正な価額で買い取ってもらい、その後、同クリニックで引き続き雇用してもらうことにより、従前どおりの診療を継続することができるのであればベストです。そして、前院長は自身の残存債務を自己破産で処理するということになります。数件そのような内容で助言差し上げたケースがございますが、今のところこのスキームで成功した案件は当事務所ではありません。M&Aのマッチングが成功するか否かがカギとなりますが、なかなか難しいといった現状があるようです。

これが無理な場合には、通常の法人破産(あるいは個人事業主の破産)と同様に手続きを進めていくこととなりますが、上に見たようなハードルが多数ございますので、かなり複雑で困難な手続きになることを予め覚悟せねばなりません。

医師や歯科医師の方々で借金問題にお悩みの方も、神戸のシャローム綜合法律事務所までお気軽にお問い合わせください。詳しくは、下のバナーをクリックください。

(弁護士 中川内 峰幸)

公務員の破産

公務員の破産

公務員の方から借金問題のご相談を受けることが、結構な頻度であります。公務員とはいえ民間人と何ら変わらず、日常的にクレジットカードを利用しますし、住宅ローンを組みますし、奨学金を借りていた方もいるでしょうし、また消費者金融から借入も行いますので、何らおかしな話ではありません。

ただ、公務員の方に特有の事情があるようですね。すなわち、皆様官報に掲載されることを強く懸念される傾向があるようです。自己破産の場合には2回、個人再生の場合には3回掲載されますが、職場によってはこれをチェックしている部署があるというお話も伺ったことがあります。

さて、自己破産を申立てたという事実は、何ら公務員の欠格事由にあたりませんので、これをもって免職となることは法律上ありません。

しかし皆様、破産だけはどうしても避けたいようで、個人再生を選択される方がほとんどです(あるいは、可能であるならば任意整理。)。自己破産をすることが出世に響いたり後々の異動に繋がったり、あるいは職場にいづらくなるのか、様々なご事情があるのでしょうが、とにかく公務員の方は破産を回避する傾向が強いですね。実際に、自己都合退職してから自己破産手続をとられたご依頼者もいらっしゃいました。私は公務員の経験がありませんので、このあたりの心理はなかなかに謎です。

いずれにせよ、自己破産が事実上無理であるならば、個人再生や任意整理を検討することになります。その場合、公務員の方々に気をつけていただきたいのが、共済です。共済組合からの借入をしている方が非常に多いです。

公務員の場合は共済が緩い審査でポンポン貸してくれるから、「何とかなるだろう」と思って債務が増大するのではないかと私なんかは思うのですが、とにかく共済からの借入をしている方がかなりの確率でいらっしゃいます。

この共済も債権者ですので、自己破産や個人再生を利用する場合には、弁護士から受任通知を送らなければなりません。そして、共済への返済は通常、給与からの天引きで行われているところ、弁護士介入後は共済に返済してはいけませんので(偏頗弁済となります。)この天引きを止めるように手配をしてもらう必要が生じます。ですので、その流れで結局職場に債務整理を行うことが知られてしまうということになります。これを避けるためには、共済を除外して、それ以外の債務を任意整理で片づけることができるかを検討することになります。

当事務所では、市役所・区役所の職員、警察官、消防士、市バス運転手、学校教員など、現業・非現業に関わらず、公務員の方々の債務整理をお手伝いした実績が多々ございます。

公務員で借金問題にお悩みの方も、神戸のシャローム綜合法律事務所までお気軽にお問い合わせください。相談は無料です。詳しくは、下のバナーをクリックください。

(弁護士 中川内 峰幸)

【個人再生】清算価値とは

【個人再生】清算価値とは

自己破産に抵抗がある、あるいは諸々の事情から破産ができない、かといって任意整理では弁済が現実問題として不可能だという方は、個人再生手続に興味をお持ちかと思われます。

そして、個人再生を利用した場合に、結局のところ今後幾ら支払えば、この借金問題から解放されるのかと思い、ネットなどで検索すると、「清算価値」という法律用語に出くわすことと思われます。本トピックでは、この清算価値(せいさんかち)についてご説明しましょう。

平たく言いますと、清算価値とは、申立人が保有している財産のことです。仮に申立人が自己破産をする場合には、手放すこととなる財産の額と言い換えることもできるでしょう。

そして、個人再生手続においては、「清算価値保障原則」というものがあります。なんだか難しそうですが、これはどういうことかと言いますと、個人再生をした場合には、少なくとも清算価値以上の金額は支払わなければならないという原則のことです。

一般に、個人再生手続は借金が原則5分の1まで減る(借金の額によっては10分の1。また、最低額は100万円です。)という説明は既にチェックされていますでしょうか。その5分の1になった金額よりも、清算価値の方が多い場合、その清算価値の金額が基準となって、当該金額を、3年乃至5年で返済していくということになります。

ですので、申立にあたっては、裁判所に対して財産目録を提出し、申立人の清算価値がいくらなのかを申述する必要があります。

実務では、清算価値算出シートというものに埋めていく方法で、申立人の清算価値を計上することとなるのですが、参考までにその内訳をご紹介しておきましょう。ご自身の清算価値を算出するための参考になさってください。

 1 現金(99万円を控除した額)

 2 預貯金(相殺等により控除後の残高)

 3 保険解約返戻金(相殺される額等を控除した残額)

 4 積立金等(積立金等を担保とした貸付金がある場合は、その金額を控除した残額)

 5 賃借保証金・敷金(敷金は返戻金から60万円を控除した残額)

 6 貸付金・求償金等(回収見込額)

 7 売掛金等(回収見込額)

 8 退職金(見込額の8分の1)

 9 不動産(不動産の時価から5%の金額を控除し、そこから被担保債権残額を控除した残額)

10 自動車等(所有権留保がされている場合は、時価からローン残額を控除した額)

11 その他動産(時価が20万円以上のもの)

12 その他の債権(過払金については回収額あるいは回収予定額)

13 その他(株券、会員権等20万円以上の価値があるもの等)

これらが清算価値として通常列挙される内容となります。逆に言えば、これらについての資料の提出が要求されるということになりますね。なお、偏頗弁済をした場合などは、これを13のその他として計上しなければならないこととなるケースがありますのでご注意ください。

借金問題でお悩みの方は、神戸のシャローム綜合法律事務所までお気軽にお問い合わせください。相談は無料です。詳しくは、下のバナーをクリックください。

(弁護士 中川内 峰幸)

【自己破産】会社にバレないでしょうか…?【個人再生】

【自己破産】会社にバレないでしょうか…?【個人再生】

借金問題で自己破産や個人再生のご相談を受ける際、「会社にバレないでしょうか…?」というご質問をいただくことが多いです。任意整理の場合はともかく、裁判所を使う自己破産や個人再生の手続きの場合には、どこからか会社に、自身がそのような手続きをしているという情報が届いてしまうのではないかと心配されるお気持ちはよくわかります。この点につきご説明しましょう。

まず、会社からの借入がない場合には、原則会社に知られることはありません。弁護士から会社に通知を送ることも、裁判所から会社に連絡がいくこともありません。ただし、会社からの借入がある場合には、会社も債権者となってしまいますので、弁護士から介入通知を送らなければなりません。会社から借りているのにも関わらず、これを隠して手続きを行うことはできません。また、会社にだけ返済をして債務を無くしてしまうこともお勧めしません。これは偏頗弁済といって、債権者平等原則に反する不公平な返済となりますので、裁判所によりペナルティが課されます。確信犯的にそのようなことをした場合、免責が得られない可能性もあります。なお、会社から継続的に「前借り」をして生活をされている方がいらっしゃいます。この前借りは、毎月のお給料から引かれる形で返済しているわけですが、これも借入に当たり、また偏頗弁済に該当しうるので注意が必要です。

次に、自己破産や個人再生を申し立てる際には、退職金の額を証明する資料を裁判所に提出しなければならない場合があります。その際、会社に正直に打ち明けて退職金証明書を発行してもらえれば話は早いのですが、なかなか言い出せない方もいらっしゃいます。そのような場合には、退職金規定等から独自に算定ができればそれで解決する場合もあるのですが、それが不可能であれば、やはり会社に対して説明が必要となるでしょう。もっとも、「住宅ローンを組む際に銀行に提出する必要があるので」などとうまく言って退職金証明書を取得される強者もいらっしゃいます。たしかに、様式は問いませんので、裁判所宛てでなくても問題はありません。

また、珍しい会社への「バレ方」としては、金融機関へお給料が振込できないことから発覚するといったケースもあります。どういうことかと言いますと、住宅特則付きの個人再生事件において、給与の振込先口座と、住宅ローン及びその他の借入等の引落口座が同一の場合、各金融機関によって取り扱いが区々(まちまち)なのです。大手の金融機関なら問題がないケースが多いのですが、地銀や信金などでは、住宅ローンとその他の返済をすぐに別口座に分けてくれず、かつ、弁護士からの受任通知が届いた後の会社からの給与の振込をはねてしまい、口座への入金がなされないといったことがあります。とすると、会社としては、「給与が振込できずに返ってきたぞ、これはどういうことか」ということになり、申立人は「実は…」と白状せねばならない事態に陥る可能性があるということです。当事務所で過去に実際にありました。

そして、これは法的手続のみに限った話ではないのですが、支払を遅滞しており、債権者より訴訟を提起された場合ですね。判決を取られ、その後は強制執行を受ける段階となりますが、債権者により給与債権を差し押さえられた場合には、もちろん会社に知られてしまいます。ですので、訴訟を起こされる前に、できるだけ早期に弁護士に相談されることをお勧めいたします。

最後に、官報です。自己破産の場合には2回、個人再生の場合には3回官報に掲載されますが、これを会社の誰かが見ていたら、知られてしまいます。とはいえ、官報を日常的にチェックしている方はそうはいませんので、このことを怖れて法的手続を断念するというのはナンセンスであると考えます(もっとも、公務員の方々はやはりこの点を不安視して、自己破産ではなく個人再生を選択される方が多いですね。)。

このように、会社が債権者でないとしても、いくつかのルートで会社の知るところとなってしまう場合があります。より詳細にお知りになりたいという方は、神戸のシャローム綜合法律事務所までお問い合わせください。相談は無料です。詳しくは、下のバナーをクリックください。

(弁護士 中川内 峰幸)

解雇された場合(されそうな場合)に気を付けるべきポイント

解雇された場合(されそうな場合)に気を付けるべきポイント

1 はじめに

 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効となります(労働契約法16条)。つまり、会社は、簡単に労働者を解雇できるわけではなく、不当解雇である可能性も考えられます。

 ただし、解雇された後の対応次第では、不当解雇を主張することが難しくなることもあります。そこで、本コラムでは、解雇された場合(されそうな場合)に気を付けるべきポイントについてご説明します。

2 解雇理由証明書を取得する

⑴ 解雇理由証明書とは?

 労働基準法22条1項では、

 「労働者が、・・・退職の事由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。」

と規定しています。

 つまり、会社は、どのような理由で解雇をしたのかを書面で明らかにする義務があります。この書面を解雇理由証明書といいます。

  解雇理由証明書は、解雇後だけでなく、解雇予告された日から退職日までの間にも請求することができます(労基法22条2項)。

⑵ なぜ解雇理由証明書が必要なのか?

・会社が解雇を通知したことを明らかにする

 会社が口頭で解雇を伝えていた事案では、弁護士が介入すると、「解雇をしていない(労働者が勝手に休んでいる)」「合意解約である」などの反論をしてくることがあります。したがって、会社が解雇を通知したことを明らかにする必要があります。

・解雇理由を明らかにする

 解雇事案では、会社が主張する解雇理由が違法であるとの主張をします。したがって、不当解雇であるかを検討するための前提として、会社が主張する解雇理由を明らかにする必要があります。

⑶ 解雇理由証明書の交付を求めるタイミング

 弁護士に相談する前に解雇理由証明書を取得することをお勧めしています。

 労働者本人が解雇理由証明書を請求した場合、会社は、無警戒であるためか、適当に作成した解雇理由証明書を労働者に交付するケースが多く見受けられます。たとえば、「成績不良」など抽象的な理由しか記載されていないケースや、事実無根の理由(無断欠勤など)が記載されているケースもありました。このような場合、具体的な解雇理由が示されていないこと、解雇理由に該当する事実が存在しないことなどを主張することで、不当解雇が認められる可能性があります。

 一方で、弁護士が労働者の代理人として解雇理由証明書を請求した場合、多くの会社では、顧問弁護士などに相談し、解雇が適法となるような理由を練り上げて主張してくる可能性があります。

 そのため、まずは労働者本人から解雇理由証明書を請求することをお勧めしています。

3 就労意思を伝える

⑴ 合意解約の主張をさせないため

 不当解雇の事案では、会社側から、「労働者も雇用関係を終了させることに合意している」、つまり合意解約が成立しているから解雇ではないと主張される可能性があります。そのため、解雇を通知された場合、労働者は、①解雇が無効であること、②会社で就労する意思があることを会社に伝えることで、合意解約の主張を阻む必要があります。

⑵ 賃金請求(バックペイ)

 労働者は、会社に対し、不当解雇されたため仕事ができなかった期間の賃金の支払い(バックペイ)を請求することができます。ただし、バックペイを請求するためには、労働者が、引き続き会社で就労する意思があることが必要となります。

4 退職を前提とした行動をとらない

⑴ 退職金、解雇予告手当を請求しない

 労働者自身が会社に対して退職金や解雇予告手当を請求することは、解雇無効を主張することと矛盾した行動と評価される可能性があります。この場合、合意解約が成立しているとの主張がされたり、バックペイが請求できなくなったりするリスクがありますので、注意が必要です。

→ もし、請求してしまっている場合

 速やかに、会社に対して解雇を争う意思を明確にするなどの対応が必要です。さらに、状況を詳しく検討する必要がありますので、速やかに弁護士にご相談されることをお勧めします。

→ もし、会社が一方的に退職金を口座に振込んだ場合

 退職金や解雇予告手当として取り扱うことはできないこと、解雇後に発生する賃金(バックペイ)として充当することを会社に伝える必要があります。

⑵ 書類にサインしない

 会社から、「退職合意書」や退職手続きに関する書類にサインするよう求められる可能性があります。しかし、会社が求める書類にはサインするべきではありません。サインしてしまうと、合意解約が成立しているとして不当解雇の主張が難しくなる可能性があります。

 会社が強引にサインを求めてきたとしても、その場ではサインをせず、一旦持ち帰って弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

5 おわりに

 不当解雇事案では、専門的な知識が必要となり、適切な対応が求められます。 お困りの方は、お気軽に弁護士にご相談ください。

(弁護士 山本 祥大)

破産や個人再生の手続中にETCカードを利用できるか

破産や個人再生の手続中にETCカードを利用できるか

表題の件についてご説明します。

自己破産や個人再生で弁護士に依頼した後は、新たに借金をしてはいけません(なお、任意整理の場合は別です。)。

ETCカードも後払いとなりますので、これは借金にあたります。ですので、申立人名義のクレジットカード付帯のETCはご利用いただけません。もし利用を続けていると、いつまでも債権額が確定しませんし、請求に応じて支払うと、偏頗弁済として免責不許可事由となってしまいます。そうなると、自己破産の場合には管財事件に移行する確率が高まりますし、個人再生の場合は清算価値に上乗せするよう裁判所から指示がなされ、最終的な弁済金額が高くなってしまうおそれがあります。

では、配偶者のETCカードを利用すれば問題ないのでしょうか。

これはケースバイケースです。利用金額が大きく、配偶者の給与手取り額を超過するような態様だとすると、実質申立人の収入で返済しているのと同視され、偏頗弁済と認定されるおそれがあります。

この点に関しては、ETCに限った話ではなく、配偶者名義の自動車のローンの返済を実質申立人が出捐しているのではないかとして破産管財人が選任されたケースもありました。紛らわしいことは控えた方が安全です。

しかし、ETCは使えないと不便ですし、お仕事等で日常的に有料道路を利用する方ならば猶更です。

そこで、デポジット式のETCというものがあるようです。あらかじめ一定の金額をチャージしておき、デビットカードのように、利用すると同時に引き去りがなされる仕様で、借入にはあたりませんので、どうしてもETCを利用されたいお客様は皆様これを使われているようですね。

借金問題でお困りの方は、神戸のシャローム綜合法律事務所までお問い合わせください。相談は無料です。詳しくは、下のバナーをクリックください。

(弁護士 中川内 峰幸)

債務整理で退職金の額が問題となる場合

債務整理で退職金の額が問題となる場合

正社員で5年以上お勤めの方は、裁判所に自己破産や個人再生を申し立てる際に、今現在の時点で仮に退職したら(自己都合退職です。)幾ら退職金が支給されるのかという資料を提出する必要があります。実際に退職する必要はありません。自己破産の場合には、管財事件への振り分けの判断資料として必要ですし、個人再生の場合には、清算価値を把握する目的で必要となります。なお、任意整理の場合には、裁判所を使う手続きではありませんので、これら資料は必要ありません。

さて、どのような資料を用意すればいいのでしょうか。最も明確なのは、会社が退職金額証明書(様式は問いません。)を発行してくれた場合、これを提出すれば、通常、裁判所は何も言わないでしょう。ただし、きちんと社印の押してあるものが必要です。

しかし会社に言い出しにくい場合(「なぜそのようなものがいるのか」と聞かれて返答に窮してしまう方は結構いらっしゃいます。)には、職場備え付けの退職金規定のコピーを取得し、これに自身の係数等をかけ合わせる等して自分で退職金額がきちんと算定できるのであれば、これで代わりとすることができる場合もあります。

あるいは、経理の方にメールで問い合わせをして、これに同人よりメールで返信を受ける形で、当該メールをプリントアウトして裁判所に提出し、無事に認められたケースもあります。そのような方法で裁判所が認めてくれるか否かは、内容の信ぴょう性次第となります。

また、中退共や確定拠出年金を退職金代わりに採用している企業もあります。これらは、法律上、差押禁止債権とされており、本来的自由財産となりますので、申立人の財産として計上する必要はありません。ただし、勤め先がこれら制度を利用しているということを疎明する資料の提出が必要となります。退職金規定内にその旨の規定があるのであれば、同規定を提出することでクリアできるでしょう。

そして、退職金の算定方法ですが、原則8分の1で考えます。なぜ8分の1かというと、退職金請求権のうち、差押可能な範囲が4分の1で、また、退職するまでの間に会社が倒産したり申立人が懲戒解雇されたりするなど不確定な要素がありますので、これを2分の1と考え、1/4×1/2=1/8という計算になるというわけです。ですので、定年退職までに間がないといった場合には、8分の1ではなく4分の1で計上せよと言われる可能性が高まりますし、実際に退職金を受領してしまった場合には、当該金員は通常の預金債権や現金に姿を変え、その全額を財産として計上しなくてはならなくなります。

借金問題でお悩みの方は、神戸のシャローム綜合法律事務所までお問い合わせください。相談は無料です。詳しくは、下のバナーをクリックください。

(弁護士 中川内 峰幸)

二度目の破産

二度目の破産

破産は何度でもできるのでしょうか。条文上は、前回の破産から7年が経過すると(正確には、免責許可決定の確定日から7年です。破産法252条1項10号イ参照。)、裁判所は免責許可の決定を行うことができるようにも読めます。

しかし、実際にはそう簡単な話ではありません。やはり二度目の破産となると、裁判所の審理は非常~に厳しくなります。

自己破産は、法律の規定に基づき、債権者に貸付金等の回収を諦めてもらう手続きですので、その免責の効果を受けることができるのは、誠実な債務者のみに限られます。そして、一度目の破産の際に、申立代理人弁護士又は裁判所(破産管財人)から、二度と債務を増加させないように注意を受けているにも関わらず、再度借金まみれになってしまったということですと、やはり反省していない=誠実な債務者ではないという目で見られてしまうのです。

ですので、たとえ7年が経過していようが、この度の借金の借入理由が前回と同じ内容だとすると(特に、前回も今回もギャンブルという場合。)、免責は極めて難しくなります。また、借入理由が異なる場合でも(例えば、前回が他人の保証債務、今回が失業という場合。)、やはり二回目ということで、裁判所が破産管財人を選任する可能性は高く、複雑で負担の大きい手続きを余儀なくされることが想定されます。

そのような場合には、自己破産ではなく、個人再生や任意整理の可否を検討することとなります。

しかし当事務所では、実際に二度目の破産を申立て無事免責に至った方も少なくありません。前回の破産と借入内容が大きく異なり、またこの度の負債の増加につき情状の余地が大きく、かつ、一度目の破産との間にかなりの期間が存在し、実質的に見て一度目の破産と切り離して考慮することが可能といった案件の場合です。

過去に自己破産をしたことがあり、現在、再度借金問題で頭を悩ませている方は、神戸のシャローム綜合法律事務所までお問い合わせください。相談は無料です。詳しくは、下のバナーをクリックください。

(弁護士 中川内 峰幸)