2025/07/26
IT業界のM&Aに関しても、契約締結後にトラブルが発生したというご相談をいただく機会が増えています。
「買収直後に主力の技術者が退職してしまい、開発が止まってしまった」
「譲渡されたシステムに重大なバグが見つかり、納品ができなくなった」
「営業利益が過大に計上されていたことが判明し、損害賠償請求を検討している」
いずれも、契約時点では把握できなかったリスクが、買収後に顕在化したことで紛争に発展した事例です。
特にIT業界では、技術、人材、知的財産といった目に見えにくい資産が多く、契約書の文言と実態との乖離が生じやすい傾向があります。
こうした紛争では、売主による表明保証違反や契約不履行が主な争点となります。
表明保証とは、売主が契約時に一定の事実(たとえば財務状況、法令遵守、知的財産の適法性など)を保証する条項であり、これに虚偽や重大な欠落があると、買主は補償請求(損害賠償請求)を行うことができます。
また、譲渡対象の内容や品質が契約上の定義と異なっていた場合には、契約不履行として履行不能や不完全履行も問題となりえます。
さらに、売主が競合事業を開始した場合には、競業避止義務違反として差止請求や損害賠償が検討されることもあります。
紛争対応にあたっては、まず契約書の内容を精査することが重要です。表明保証条項、解除条件、補償条項などの記載と、実際に開示・交渉された内容との整合性が判断の出発点になります。
そのうえで、事実関係の整理、損害額の算定、交渉または訴訟の手続選択といった対応が必要となります。
IT業界のM&Aでは、スピード感と専門性の高さが求められる一方で、契約後に“想定外”のリスクが顕在化するケースも少なくありません。契約書の読み方と交渉記録の把握が紛争解決の鍵となります。
ITを取り扱う事業の譲渡で失敗したという方は、シャローム綜合法律事務所までお気軽にお問い合わせください。