2025/07/18
当事務所では、飲食業に関するM&Aトラブルのご相談も多数頂戴しております。
事業譲渡を中心に、店舗の売買やブランドの承継が活発に行われている一方で、契約の不備や人材の引き継ぎ、店舗契約の問題など、飲食業界特有のリスクが顕在化するケースが少なくありません。
以下では、実際に寄せられるご相談内容をもとに、飲食業界におけるM&Aトラブルの典型例と予防策を整理いたします。
<飲食業界で頻発するM&Aトラブル>
1. 契約内容の不備
– 事業譲渡契約書における「譲渡対象資産」の定義が曖昧
– 備品・什器・食材在庫の評価方法に齟齬があり、譲渡後に紛争化
– リース契約やサブスクリプション契約の承継漏れ
2. 従業員の引き継ぎ問題
– 雇用契約が口頭ベースで、買収後に労務トラブルが発生
– 労働条件の変更により、キーマンスタッフが離職
– 社会保険・雇用保険の手続き漏れによる行政指導
3. 店舗賃貸借契約の承継トラブル
– 賃貸借契約が定期借家で、更新拒否により移転を余儀なくされた
– オーナーの承諾が得られず、契約解除リスクが発生
– 原状回復義務の認識違いによる追加費用の発生
4. 売上・利益の虚偽申告
– 過去の売上データが現金ベースで改ざんされていた
– 税務申告との整合性が取れておらず、買収後に税務調査が入った
– 営業利益の水増しによる過大評価
<トラブルを防ぐための実務ポイント>
– 契約書の精緻化
事業譲渡契約において、譲渡対象・除外対象を明確に記載。表明保証条項や違約金条項の設計も重要です。
– デューデリジェンスの徹底
財務・法務・労務・店舗契約を網羅的に調査。実地確認や従業員ヒアリングも有効です。
– 賃貸借契約の事前確認と交渉
店舗契約の承継可否を確認し、オーナーとの三者合意書の締結を検討します。
– 従業員対応の丁寧な設計
雇用条件の維持・変更に関する説明と同意取得。労働法令に基づく手続きの漏れ防止が不可欠です。
<飲食業のM&Aトラブルは、弁護士にご相談ください!>
飲食業界のM&Aはスピード感が求められる一方で、契約・人材・店舗という“見えにくい資産”の継承が成功の鍵を握ります。
「譲渡は済んだが、運営がうまくいかない」「契約内容に不備があった」などのお悩みがございましたら、ぜひシャローム綜合法律事務所までお気軽にご相談ください。
飲食業界特有の実務と法務の両面から、丁寧にサポートいたします。
(弁護士 中川内 峰幸)