2026/09/08
M&Aを装った法人口座悪用のご相談が増えています
最近、同じ手口によるご相談が複数寄せられています。いずれも一般的なM&Aと説明され、合同会社を設立させられたうえで法人口座を引き渡してしまったという事案です。これは通常のM&Aではありません。法人名義の銀行口座を取得するために、M&Aを装って近づく詐欺です。
手口の特徴
次のような流れが共通しています。
・業者から一般的なM&Aとの説明を受ける
・合同会社を設立し、譲渡手続を進めるよう誘導される
・法人口座を業者に引き渡す
・譲渡後に利用されるものとの理解で対価を受け取る
・株式譲渡契約書や事業譲渡契約書は作成していない
・契約締結も登記変更も行われていない
・その後、裁判所から仮差押決定や不当利得返還請求の訴状が届く
・原告は投資詐欺の被害者で、警察に被害届を提出済み
・法人口座が投資詐欺の被害金の振込口座として利用されていたことを初めて知る
複数の相談が同じ構造で発生しており、組織的な詐欺スキームが存在すると判断するのが自然です。
法的な問題点
ご相談者には被害者的側面があります。
しかし、法人口座を第三者に引き渡す行為は、犯罪収益移転防止法違反や銀行に対する詐欺幇助として評価される可能性があります。
契約書も登記変更もなく、少額の対価だけ受け取って口座を渡す行為は、通常のM&Aとはまったく異なる危険な行為です。
なぜ狙われるのか
・法人口座は犯罪グループにとって価値が高い
・副業感覚の会社売買はリスクを見落としやすい
・合同会社は設立が容易で悪用されやすい
・M&Aという言葉が正当な取引であるかのように誤信させる
注意喚起
これはM&Aではありません。M&Aを利用した詐欺です。
法人口座を第三者に渡す行為は重大な刑事リスクを伴います。副業感覚で会社を売買することは避けてください。
M&A仲介会社の広告が氾濫し、M&Aが一般層にまで広く知られるようになった結果、詐欺グループがこの領域を標的にするようになったことに強い危機感を覚えます。
少しでも不審な勧誘を受けた場合は、契約書の有無や登記変更の手続を必ず確認し、専門家への相談を強く推奨します。
(弁護士 中川内 峰幸)