2024/08/19
1 法定の離婚事由
民法では、裁判で離婚が認められる原因について、次のように定められています(民 法770条1項)。
① 相手方に不貞行為があったとき
② 相手方から悪意で遺棄されたとき
③ 相手方の生死が3年以上明らかでないとき
④ 相手方が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
モラハラは、独立した離婚原因としては定められていませんが、⑤「その他婚姻を継 続し難い重大な事由があるとき」に該当する可能性があります。
2 モラハラとは
モラハラとは、言葉や態度による、精神的な暴力と言われています。日常的に心無い 言葉を投げかけられ、威圧的な態度で追いつめられるのは、本当にお辛いことかと思い ます。
一方で、モラハラの特徴としては、身体的な暴力を伴わないため、モラハラの事実を 証拠にすることが難しい事があります。また、モラハラをする人は、外面がよくて社交 的な場合が多いです。そのため、モラハラを離婚原因として主張する場合には、準備が 必要となります。
3 モラハラを主張するための証拠
モラハラを離婚原因として主張するためには、以下のような証拠を集めることが考えられます。
⑴ 録音データ
離婚調停や裁判の際には、録音データを文字起こしして提出する必要があります。
⑵ メールのやり取り
メッセージの内容だけではなく、メールの回数や不在着信の回数なども問題となります。
⑶ 医師の診断書
日常的にモラハラの被害を受けている場合には、抑うつ状態、うつ病、適応障害、パニック障害などの精神疾患にかかってしまうこともあります。不眠や倦怠感、食欲不振などの症状がある場合には心療内科に受診し、診断書を取得することも考えられます。
4 モラハラで離婚が認められるのか
「その他婚姻を継続し難い重大な事由」とは、夫婦関係が破綻し修復が不可能であることを言います。裁判所の傾向として、配偶者のモラハラ行為のみを離婚原因として離婚を認められることは、難しい場合もあります。 したがって、モラハラを離婚原因として主張する場合には、①モラハラの証拠を確保するだけでなく、②別居をして相手方と距離を置く、③相手方にモラハラの事実を自覚させるなど様々な対処が必要となります。 離婚調停を申立て、過去のモラハラについて主張する中で、相手方が夫婦関係の修復が難しい状況にあることを理解し、離婚に応じるケースもあります。
5 おわりに
モラハラでお悩みの方は、相手方に離婚の話を切り出すことすらできず、辛い日々を過ごされている方が多いと思います。モラハラが原因で離婚を検討されている方は、シャローム綜合法律事務所にご相談ください。
(弁護士 山本祥大)